ロンドンに研修中、私はKings college hospitalだけではなく、その他のNHSの病院でも研修していました。そのうちの一つがロンドンの中心部にあるUniversity college london hospitalという病院でした。

研修ので行っていた病院の中で、唯一ロンドンの中心部にある病院でいつも楽しみでした。毎朝、その病院のコンサルタントであるフレッドが僕たちフェローにレクチャーをしてくれました。フレッドは多くの症例を診てきており、その症例のデータ一つ一つを大切に保存して、僕たちに見せてくれていました。

その時のレクチャーの中でいつもこの症例で患者さんにどう説明する?と質問を受けました。わからないときはみんな黙ってしまうのですが、そんな時にフレッドが『胎児診断するだけではFetal Medicineとは言えないよ』と言っていたのを覚えています。

日本に帰ってきてから、以前勤務していた病院で初期の胎児スクリーニングを行う外来を作りました。そして、研修医の先生も見学に来てくれていて、超音波検査を指導する機会も頂けるようになりました。有難いことに、何人も見学に来てくれて超音波検査をみんな上手になりたいんだなと感じていました。ただ、多くの先生は、僕の超音波検査が終わると忙しい病院ですので呼ばれたりして自分の仕事に戻って行ってしまいます。何かの所見があった場合も、所見を熱心に見て感心し、検査が終わると自分の業務に戻っていかれます。

超音波検査が上手になり、多くの妊婦さんの超音波検査をしていれば必ずどこかで胎児疾患をもった赤ちゃんに出会います。胎児疾患を見つけたらそれで終了ではなく、そこからがスタートだと思っています。

妊婦さんやその家族に現状をどのように説明するのか。どのように専門家に繋げていくのか。その妊婦さんと胎児に最も良いケアを提供するためにはどうしたら良いのか?色々なことを考えて喋っているつもりです。思いがけないことを聞かれることもあります。同じことだとしても妊婦さんによって返って来る反応も違います。自分の説明がいまいちだと患者さんの反応も”?”という反応だったりします。

その全てを研修医の先生には見てくれたらなと感じています。

僕も研修医だった頃は持たされていたPHSが鳴りっぱなしだったこともありますので、忙しいのだろうなとは思うのですが。。。

フレッドの『胎児診断するだけではFetal Medicineとは言えないよ』という言葉は自分の心に棘のように刺さっているように思います。いつもフレッドに『ママと赤ちゃんにどんなケアが一番良いのかもっと考えろ』と言われているように感じ、謙虚に頑張ろうと思わせてくれます。