私は、福島県立医科大学を卒業後、湘南鎌倉総合病院へ初期研修医として就職しました。湘南鎌倉総合病院では多くの救急疾患や、各科での充実した研修を経験させて頂きました。
初期研修で最初に回った科が産婦人科だったこともあると思いますが、分娩の現場がとても感動的に感じました。また、婦人科では腫瘍から更年期や月経困難症まで、とても幅の広い疾患が治療の対象となるため、幅の広い診療ができるところに魅力を感じ、産婦人科医となりました。
湘南鎌倉総合病院でそのまま産婦人科医としての研修を開始しました。産婦人科研修中は多くの産科救急や婦人科疾患を経験させて頂きました。
その中でNICUの研修へ行かせて頂く機会がありました。その際に、妊娠中には診断ができなかった胎児疾患を持って生まれた赤ちゃんを診させて頂くことがありましたが、その赤ちゃんはそのNICUでは治療をすること困難であったため、治療可能な他の病院へ搬送となりました。そのようなことがきっかけで胎児のときに胎児疾患を診断することが、赤ちゃんの予後をよくすることが可能となるのではないかと考えるようになりました。
そんなことを考えながら、湘南鎌倉総合病院での研修期間を終え、超音波検査の勉強をするためにどこかで研修できないかと考えていました。そんな時、イギリスのチャリティー団体であるFetal Medicine Foundationで世界中から研修生を受け入れていることを知りました。ダメもとで応募したところ、来ていいよと快く返事を頂き、研修を開始することができました。
FMFの研修では、毎日、大学病院で多くの超音波検査を経験することができました。世界中からきている研修生と切磋琢磨しながら、胎児超音波検査を学びました。最初は先輩の研修生についてもらって検査をしていましたが、ある程度検査ができるようになると、自分でその外来を任せられるようになります。最初は責任の重さに、自分でできるのか不安でしたが、他の研修生にも助けてもらい何とかやりきることができました。時に異常を疑うこともあり、そのような時はコンサルタントと相談して、患者さんへ説明などもしていました。また、FMFを主催している教授は世界的に有名な先生で、胎児治療もたくさんしていました。毎日検査の合間に教授のしている胎児治療を見学し、学ぶことができました。
研修を終え、湘南鎌倉総合病院に戻りました。湘南鎌倉総合病院ではスタッフとして勤務しましたが、その間に胎児スクリーニングを専門に行う外来を開始しました。現在も他のスタッフの助けを借りながら、非常勤でその外来も続けています。そして、より多くの胎児超音波検査を妊婦さんに提供したいと考え、当院を開業しました。
私がFMFで研修をしている間にも日本でもNIPTが盛んにおこなわれるようになり、特に未認可施設では世界的にも推奨されていないNIPTの項目が、十分な説明もなしに行われているようになっています。そのような中で妊婦さんだけが置き去りにされているように感じます。少しでも最適なケアを妊婦さんに届けられるよう努力をしていきたいと思います。
市田知之