イギリスへはFetal Medicine Foundationというチャリティ機関が研修を受け入れてくれて、そのボスが教授をしているKing’s College Hospital(KCH)で主に研修をしました。

基本的には超音波のトレーニングが主ですが、胎児治療を教授が行っているので空いた時間に見学にいき、多くの症例を見学することができました。

超音波検査では通常のマタニティケアの一環で来院される妊婦さんへ超音波検査を行っていました。日本と違い、ほとんどの人がNHSと言われる公立病院を受診して超音波検査を受けるので、地域のほとんどの妊婦さんがKCHを受診します。その為、毎日毎日、多くの超音波検査を行いました。ルーチンケアの超音波ですので、ほとんどの超音波検査では正常の所見でした。

実際に研修を通じてとても多くの超音波検査を経験しましたので、胎児疾患も多く経験しましたが、大半は正常な胎児の超音波検査でした。帰国してから、大半が正常所見である研修を経験することが果たして意味があるのかと問われることもありましたが、今はその経験が大きく役に立っていると感じています。

正常を知らなければ、殆どが正常な胎児の中から胎児疾患を持っている胎児をみつけることはできないと感じているからです。私が研修医でERをローテートしていた時に、先輩の医師にCTの読影を教わっていた際、正常を知らなければ異常を判断することはできないよと言われました。超音波検査も同じだと思っています。正常を知らなければその中から、頻度の低い胎児疾患を診断することはできません。日本では多くの妊婦さんが大学病院や子ども病院のような高次施設でケアを受けているわけではありません。だからこそ、我々のクリニックのような1次施設であっても、適切な胎児超音波検査を提供し、胎児疾患を持っている胎児を適切な時期に医療提供が可能な医療機関につなげていくことは重要なことだと考えています。

また、当院にはスクリーニングのみを希望されて来院される妊婦さんもいらっしゃいます。理由はどうであれ、皆さん心配していらっしゃいます。検査で何も所見が無かった時、そのような妊婦さんたちに、「今の段階の見え方としては全て正常です」と言うことができると、皆さん安心して頂けます。イギリスでの研修を経験できて本当に良かったと感じます。