当院では胎児超音波検査を中心に出生前検査を行っております。妊婦さんにお話を伺いますと、NIPTを受けられている方も多く、改めてNIPTに対する妊婦さんからの関心の高さが感じられます。

 NIPTはお母さんの血液の中を流れているDNAをみています。血中のDNAは細胞が壊れ細胞の核の中にある染色体から由来したものです。ではその細胞はどこから来ているかというと、一つはもちろんお母さんの細胞です。もう一つはお母さんと接している胎児を栄養している胎盤の細胞です。胎盤の細胞由来のDNAをCell Free Fetal DNA (cffDNA)と呼ばれることがありますが、この呼び方は間違っていてCell Free DNAと呼びましょうという先生もいます(Fetalとは”胎児の”という意味です)。なぜならば胎児由来の細胞から出てきたDNAではなく、トロフォブラストと呼ばれる、胎盤の母体側の表面を覆っている細胞から出てきているDNAだからです。

 NIPTでは、現在多くの施設で行っている方法では次世代シーケンサーを使用し、その血液を流れているそれぞれのDNA断片が何番染色体由来なのかを判別していきます。それぞれの染色体由来のDNAの量が参考とされるデータと一致するかどうかを確認し、例えば21番染色体由来のDNAが参考とされるデータより優位に多いとなった場合は21番染色体の数が多いのではないかと考えられ、21トリソミーがハイリスクとなります。

 結果が出た際に、その結果がより確からしいのかどうかを評価する指標に胎盤由来DNAの比率(fetal fraction)があります。一般的にはfetal fractionは10%程度と言われていますが、より低い比率でも結果は返ってきます。検査会社によるのかもしれませんが、4%もしくは3%以上で結果を出すところが多いのかなと思います。一方で胎盤の細胞に染色体異常があった場合、より多くの胎盤由来のDNAが含まれていた方が、DNAの量の変化はより大きくなると考えられています。そのため私が留学していたKings College Hospitalのニコライデス教授はfetal fractionも考慮に入れて、それぞれ、個別のリスクを出すべきだと言っておられました。そこまで考慮されて、検査会社がNIPTの結果を出しているのかはわかりませんが、一つの参考となるとは思います。まず、結果が返ってきたときにfetal fractionが記載されているかどうかを確認してみてください。

 NIPTではその他のスクリーニング検査であるコンバインドテストやクアトロテストとは違い、胎盤由来のDNAをみています。それでも偽陽性や偽陰性があるため、検査結果と実際の胎児の状態が100%一致するものではありません。なぜそのようなことが起こるのか、次回記載したいと思います。