NIPTは、あくまでもスクリーニングテストであり、診断的な検査ではありません。そのため、NIPTで陽性となったとしても、診断的な検査を行わない限り診断をすることはできません。
その理由として幾つかありますが、例えば、vanishing twinと呼ばれる状態があります。これは最初の段階では双子の妊娠だったんだけれども、途中で一方が育たなくなってしまった状態です。この場合、一方の胎児の心拍は止まってしまったけれどもその胎児の胎盤となっていくはずだった絨毛はしばらく存在しています。そのため、vanishing twinとなった側の絨毛がNIPTの結果に影響を及ぼすことがあります。一般的に染色体異常のある胎児は妊娠中に心拍が止まり流産や胎児死亡となる頻度が、染色体異常のない胎児と比較して多いと言われています。そのため、vanishing twinに染色体異常があった場合は、NIPTの結果陽性となったとしても、順調に成長している胎児には染色体異常がなければ、偽陽性となります。そしてこの状況は超音波検査をすることで確認することが可能です。その為、当院ではNIPTを希望される妊婦さんには、検査を受ける前に超音波検査を受けるよう情報提供しています。
そして、頻度としては低いですが、母体に染色体核型のモザイクや悪性腫瘍がある場合もあります。
また、胎盤の染色体核型と胎児の染色体核型が異なる場合があります。特に偽陽性となる状況は胎盤モザイク(Confined Placental Mossaichism: CPM)と呼ばれます。胎盤の細胞に異常があり、胎児には染色体異常を認めない状況です。CPMには3つのパターンがありますが、トロフォブラストに染色体異常があるCPMでは偽陽性となる可能性があります。そのため、NIPTで陽性(ハイリスク)と判定が出た場合、早急に診断的検査を受けたいと考える妊婦さんも多いかと思いますが、まずは超音波で胎児に所見があるかどうか確認することはとても重要なことだと考えています。特にトリソミー13やトリソミー18は妊娠初期であっても解剖学的な異常を確認できることが多いです。逆に言えば、超音波で異常な所見が認められないのであれば、胎盤モザイクの可能性を考えて、羊水検査で確認していくことが適当かと思います。
逆に、モザイクの状況によっては偽陰性の結果となることがあります。これはTrue Fetal Mosaichism:TFMと呼ばれる状態の中に、トロフォブラストには核型異常は無いけれども、胎盤の器質を構成する細胞や胎児には染色体異常を認めることがあります。母体血中の中を流れている胎児由来のDNA断片の多くはトロフォブラストと言われており、その細胞に染色体異常が無いのであれば、胎児に異常があったとしても結果は陰性となり、偽陰性となります。
このようなケースの頻度は低い(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26213308/)ようですが、ゼロではありません。このような場合でも胎児に染色体異常があれば超音波検査で、何らかの異常な所見を確認することができるかもしれません。
以上の理由から、NIPTではDNA断片を見てはいるけれども偽陽性や偽陰性は出てしまいます。そのため、 特に陽性と結果が出た場合は診断的な検査が必要となります。陰性と結果が出た場合でも、超音波検査で何も胎児に異常がないとわかれば、より安心できるかと思います。
陽性と結果が出た場合、とても不安な気持ちになり、診断を受けたような気持にすらなることもあるかもしれません。しかし、NIPTは上記の理由で診断的な検査ではありません。相談先が無く、困っている妊婦さんは当院(https://www.fetus-clinic.com/)まで一度ご連絡いただければと思います。