当院では、この度、日本医学会が定めるNIPTの連携施設となりました。

当院の基幹施設は東京大学病院となります。そのため、NIPTの検査の過程で必要な場合は、東京大学病院と連携を取りながらの診療となります。

当院のNIPTの検査項目はトリソミー13、18、21のみとなります。

日本医学会ではNIPTは3つのトリソミーのみに限定することを定めています。その理由としてはいくつかあるかと思いますが、3つのトリソミー以外のNIPTに関しては精度評価が不十分であることが指摘されています。

陰性的中率(結果が陰性であったときに実際に対象となる状態がない確率)はとても高いことが言われています。しかし、一般的に罹患率の低い疾患や症候群に対するスクリーニング検査の陰性的中率は高くなることが知られています。

例えば、頻度が高い微小欠失症候群でも1/4000程度です。この時、感度50%、特異度50%(コインの裏表の出た側で結果を陽性、陰性とする場合と同じです)であったとしても、陰性的中率は高いものとなるでしょう。4000人中、3999人は陰性ですので、感覚的にも陰性的中率は高くなるのは納得がいきます。

しかし、陽性的中率は精度評価が十分でないため不明です。WHOの良いスクリーニング検査の条件として、高い陽性的中率が挙げられています。

診断をするためには羊水検査を行わなければいけませんが、陽性的中率が低ければ必要がない羊水検査を多くの妊婦さんにすることになりかねません。そのような検査に高いお金を払わせていることに、個人的にも疑問を感じます。

当院ではNIPTの受検を希望されている妊婦さんにはまず胎児ドック(胎児超音波検査を受けて頂いております。

最近の超音波検査機器はとても性能が高くなってきています。それに加えて、検査者が適切なトレーニングを受けていることで、妊娠初期であっても多くの構造異常を検出することが可能です。

構造学的な異常があれば、絨毛検査や羊水検査など診断的な検査に直接進むことが、国際的な学会でも推奨されており、当院でもそのように説明しております。一方で、構造学的な異常がなければNIPTを行い、トリソミーのリスク評価を行っています。

最後に当院で採用しているNIPTですが、パーキンエルマのヴァナディスという機械で検査を行なっている、国内の検査会社にお願いしております。

NIPT検査で問題となることの一つに結果が出ないということがあります。結果が出ない理由としては母体血中の胎児胎盤由来のDNAの割合(Fetal fractionと呼ばれます。)が少ないことが考えられます。これまでの技術を使用している検査会社ではfetal fractionが4%以下である場合は結果を出さないことが多いようです。

現在多くの検査会社で使用されているNIPTでは母体血を流れているDNA断片をどの染色体由来なのかを判断して、その量的な変化を見ています。そのためfetal fractionが少ない時には胎盤の染色体に量的な変化があったとしても検出できず、結果が出ない(no call)ことになります。

この場合は、週数を遅らせて胎盤が大きくなってきたところで再検査をするか、診断的検査を行うかの選択となります。NIPTを再度行うことで時間も費やされます。また一方で絨毛検査や羊水検査の頻度が増えることで流産のリスクも相対的に増えることになります。特にトリソミー13や18は胎盤も小さいため、no call となる可能性もあり得ます。

パーキンエルマのバナディスはこれまでとは異なる技術を用いており、そのためfetal fractionも2%程度までは結果を出すことができるそうです。no call の頻度を減らせることはNIPTを受ける方にとって、検査結果が出ないことにいよる不安を減らせることに繋がると思います。

NIPTに関してご相談がある方は、どうぞ当院にお問合せください。